どうも、なけ3です。リーマンショック世代で、気づけばこの業界14年のアラフォーです。
このブログは、倉庫・工場・物流系のブルーカラー派遣を現役営業目線でぶっちゃけていくブログです。
はじめに、カルテル報道、あなたの怒りは正しい。でも現場は少し違う
2026年6月2日、派遣大手5社(パーソルテンプスタッフ・スタッフサービス・リクルートスタッフィング・アデコ・マンパワーグループ)に公正取引委員会が立ち入り検査に入りました。
派遣料金の引き上げをめぐるカルテル疑惑です。SNSでは怒りの声が溢れました。
「自分がもらえるはずだった額を搾取されてた」
「派遣会社は悪だ」
「マージンで儲けてる連中が許せない」
その怒り、おかしくないと思います。料金を上げておきながらワーカーへの還元を後回しにしていたなら、それは問題です。
ただ、14年間ブルーカラー系の現場にいた自分から見ると、「派遣会社=丸儲け」という図式は、少なくとも倉庫・工場系には当てはまりません。むしろ逆の現実があります。
今回はその実態を、数字で見せます。
カルテル疑惑の経緯をまだ知らない方はこちらから↓
→ 【速報・2026年6月】派遣大手5社に公取委が立ち入り検査 カルテル疑いとは?倉庫・工場系への影響を派遣営業が解説
大手カルテルの世界――請求3,000円超、それでも「搾取」だったのか
報道によると、今回問題になった5社の平均的な派遣料金(8時間換算)は約26,000円、時給換算で約3,200円超の水準です。
業界平均のマージン率は約30%。時給3,200円なら、そのうち約960円が派遣会社の取り分(マージン)ということになります。
カルテル疑惑の核心は、「料金を引き上げたのにワーカーへの支払いを増やさず、マージン比率を自社に有利な方向へ調整していた」という点です。2022年11月ごろから経営幹部クラスが料金引き上げの調整を行っていたとみられています。
これは請求3,000円超のゾーン、つまり事務・IT・専門職系のホワイトカラー派遣の話です。
では、倉庫・工場系のブルーカラー派遣はどうか。
ブルーカラー系は「別の戦場」にいる
ブルーカラー系には、ホワイトカラー系とは根本的に違うルールがあります。それが「労使協定方式」です。
派遣会社は毎年、国が定める職種別・地域別の「基準値(下限)」以上の賃金をワーカーに支払わなければなりません。この下限は毎年上がっていて、派遣会社が勝手に削ることはできません。
令和8年度(2026年度)、ピッキング・梱包などブルーカラー系職種の下限時給は:
- 東京:1,388円(うち交通費相当79円/h含む、実質賃金1,309円)
- 千葉:1,333円(うち交通費相当79円/h含む、実質賃金1,254円)
これが「法律で決まった最低ライン」です。派遣会社はこれを下回れない。そしてブルーカラー系の多くは、この下限ギリギリで戦っています。
同一労働同一賃金とブルーカラー系時給の関係をもっと詳しく知りたい方はこちら↓
→ 【派遣営業の本音】大手5社カルテル疑惑 倉庫・工場系には直接関係ない? 同一労働同一賃金で考える時給の現実
自分の地域・職種の下限時給を確認したい方はこちら↓
→ 【全職種版】派遣の労使協定方式 都道府県別 時給下限早見表【令和8年度・297職種】
現場の数字を見てほしい――原価計算してみた
実際に、東京を基準に、参考として千葉の数字も並べて原価計算してみます。
計算条件
- 稼働日数:20日/月、1日8時間
- 社保:協会けんぽ(健保5.8%+厚年9.15%+雇保0.95%+労災0.3%=16.2%)
- 有給コスト:10日/年として概算計上
- 販管費:請求額の13%
- 交通費:労使協定準拠 79円/h × 8h = 632円/日
| 項目 | 東京・下限 請求1,700円 | 東京・中央 請求1,800円 | (比較用・参考) 千葉・下限 請求1,650円 | (比較用・参考) 千葉・中央 請求1,750円 |
|---|---|---|---|---|
| 1日請求額 | 13,600円 | 14,400円 | 13,200円 | 14,000円 |
| 支払賃金(交通費込) 時給換算:東京1,388円/千葉1,333円 | ▲10,504円 | ▲10,504円 | ▲10,664円 | ▲10,664円 |
| 社保・雇保(会社負担) | ▲1,702円 | ▲1,702円 | ▲1,728円 | ▲1,728円 |
| 有給コスト | ▲292円 | ▲292円 | ▲296円 | ▲296円 |
| 粗利 | 1,102円 | 1,902円 | 512円 | 1,312円 |
| 販管費(13%) | ▲1,768円 | ▲1,872円 | ▲1,716円 | ▲1,820円 |
| 経常利益 | ▲666円 | +30円 | ▲1,204円 | ▲508円 |
| マージン率 (派遣法準拠) | 22.7% | 27.1% | 19.2% | 23.8% |
※概算。社保料は標準報酬月額の等級テーブルで実際と差が生じます。販管費は業界平均水準を使用。
4パターン中3パターンが赤字です。東京の中央値(請求1,800円)でやっと黒字になりますが、それでも1日たった30円。千葉の下限水準(請求1,650円)では1人稼働させるたびに1日1,204円の赤字になります。
これがブルーカラー系の現実です。
じゃあ派遣会社はどこで生きているのか
正直に言います。多くのブルーカラー系派遣会社が黒字を出しているのは、スポット・スキマバイト(社保未加入)の稼働によるところが大きいです。
社保未加入の短期・単発稼働は、社保コスト(約16.2%)がかかりません。さっきの計算から社保をなくすとどうなるか、見てみましょう。
| 項目 | 東京・下限 請求1,700円 | 東京・中央 請求1,800円 | (参考)千葉・下限 請求1,650円 | (参考)千葉・中央 請求1,750円 |
|---|---|---|---|---|
| 1日請求額 | 13,600円 | 14,400円 | 13,200円 | 14,000円 |
| 支払賃金(交通費込) 時給換算:東京1,388円/千葉1,333円 | ▲10,504円 | ▲10,504円 | ▲10,664円 | ▲10,664円 |
| 社保・雇保(会社負担) | なし | なし | なし | なし |
| 有給コスト | ▲292円 | ▲292円 | ▲296円 | ▲296円 |
| 粗利 | 2,804円 | 3,604円 | 2,240円 | 3,040円 |
| 販管費(13%) | ▲1,768円 | ▲1,872円 | ▲1,716円 | ▲1,820円 |
| 経常利益 (社保なし) | +1,036円 | +1,732円 | +524円 | +1,220円 |
※スポット・単発稼働で週20時間未満・2ヶ月以内など社保加入要件を満たさない場合の試算。
社保がなくなるだけで、全パターン一気に黒字転換します。
つまり現状の構造はこうです。
- レギュラー(社保あり)の稼働:ほぼとんとんか赤字
- スポット・スキマ(社保なし)の稼働:黒字
- スポットの黒字でレギュラーの赤字を補填している
「派遣会社の都合じゃないか」と感じる人もいるかもしれません。でも、この構造を知ったうえで動けるワーカーは強いと私は思っています。
ワーカー目線で考える――あなたが「黒字ワーカー」になる方法
派遣会社にとって「稼ぎやすいワーカー」と「稼ぎにくいワーカー」がいます。これは悲しいことでも何でもなく、知っておくと自分の交渉力になる話です。
① スキルで単価を上げる
請求単価が上がれば、同じ支払賃金でも利益が出やすくなります。ブルーカラー系で効果が大きいのはフォークリフト免許です。フォーク資格ありというだけで請求単価が100~300円上がることは珍しくありません。
また、多くの派遣会社には現場リーダー制度があります。呼び方は会社によって違いますが(「チーフ」「サブリーダー」など)、リーダーとして認定されると時給に手当が上乗せされるケースがほとんどです。登録している派遣会社に「リーダー制度はありますか?」と聞いてみる価値は十分あります。
あなたの時給が上がるのはもちろん、派遣会社も黒字になる。これがWin-Winの単価交渉の土台です。
② 「自分がいると現場が回る」をアピールする
時給交渉で「もっと給料を上げてほしい」とだけ言っても、なかなか動きません。
有効なのは、派遣会社にとってのメリットを一緒に提示することです。
たとえばこういう伝え方があります。
「私がいれば、新人さんのフォローもできるので、この現場にもっと多くの人数を入れられると思うんですよね。そうなると売上にもつながると思うんですが、その分少し時給に反映してもらえませんか?」
派遣会社は「多く稼働を入れられる現場」を作りたい。そのカギを握るのがベテランワーカーのあなたです。自分が現場に入ることで派遣会社の受注量が増えるというロジックは、営業担当にとってもっとも動きやすい理由になります。
また、「自分がいると社員の方の手が空く」という視点も有効です。社員の工数を削減できるというのは、派遣先にとっても価値があり、継続発注の理由になります。それは間接的に、あなたの単価交渉の材料になります。
③ 社保加入を「当然の権利」として使う
週20時間以上・2ヶ月超の見込みがあれば社保加入は義務です。「社保に入るから損」という感覚は捨ててください。社保は老後・傷病・雇用保険の網です。堂々と使いましょう。
営業として思うこと
カルテル問題は、ホワイトカラー・専門職系の派遣において、料金引き上げの恩恵がワーカーに届いていなかった可能性がある話です。それは調査を待つ必要があります。
ブルーカラー系の現場にいる自分から見ると、「派遣会社が丸儲け」という景色は全く見えません。むしろ毎年上がる労使協定の下限に、請求単価の交渉が追いつかずに苦しんでいる会社がほとんどです。
それでも、ワーカーに強くなってほしいから、この記事を書きました。
派遣会社の内側を知ったうえで動けるワーカーが増えれば、業界全体がもう少しまともになると思っています。
まとめ
- ✅ カルテル疑惑の対象は主にホワイトカラー・専門職系(時給3,000円超の請求帯)
- ✅ ブルーカラー系は労使協定方式の下限に縛られており、構造が根本的に異なる
- ✅ 東京・千葉の下限〜中央値水準では、レギュラー社保ありはほぼとんとんか赤字
- ✅ 社保なしのスポット稼働は全パターン黒字――そこで補填している構造
- ✅ フォーク免許・リーダー制度の活用が単価交渉の土台になる
- ✅ 「私がいると現場に多く入れられる」という論法が営業担当に刺さる
- ✅ 社保加入は権利。堂々と使う
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【免責事項】本記事は倉庫・工場・物流系のブルーカラー派遣を対象とした現場感覚に基づく情報です。ホワイトカラー・専門職系には当てはまらない内容が含まれます。社保料率・労使協定下限は変更される場合があります。最新情報は厚生労働省・各派遣会社の公開情報をご確認ください。カルテル疑惑については現在調査中であり、確定した事実ではありません。
私が使っているマットレスと枕:



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