どうも、なけ3です。リーマンショック世代で派遣登録からスタートし、気づいたら同じ会社の営業になっていたアラフォーです。現場で気づいたことをゆるく発信しています。
現在「派遣の時給シリーズ」を書いています。
👉 第1部:派遣の時給、どうやって決まるの?2つの方式をわかりやすく解説
👉 第2部:倉庫・工場系の時給はどう決まる?労使協定方式を深掘り解説
今回は第2.5部として、番外編的なぼやきを書いてみます。
次回の第3部では交通費の仕組みについて解説する予定です。
はじめに
今回はちょっと真面目な話というより、現場営業としての「うーん…」という気持ちを正直に書いてみます。
制度の解説というよりぼやきです笑
最近、時給交渉がほぼ意味をなさなくなってきた
派遣の現場にいると、ワーカーさんから「時給上げてもらえませんか?」という相談をよく受けます。
以前はそういった交渉を派遣先と話し合って、頑張って時給を上げてもらうケースもありました。
でも最近は状況が変わってきています。
毎年4月に勝手に時給が上がるんです。
同一労働同一賃金の労使協定方式により、厚生労働省が毎年基準額を改訂します。ここ数年は毎年4月に50円前後の上昇が続いています。さらに一部の職種では10月にも改訂があります。
政府の「時給1,500円目標」の影響
政府が掲げる最低賃金1,500円目標の影響もあり、賃金水準は全体的に右肩上がりになっています。
派遣の基準額もその流れに乗って毎年上がっていく。
これ自体はワーカーさんにとっていいことです。働く人の賃金が上がるのは素直に喜ばしい。
でも営業として現場を見ていると、ちょっと複雑な気持ちもあるんですよね。
頑張っても頑張らなくても同じ上昇率
ここが「うーん」ポイントです。
毎年4月の基準額改訂は、頑張っているワーカーさんも、そうでないワーカーさんも、基本的に同じように時給が上がります。
一生懸命仕事を覚えて、スキルを磨いて、現場でも信頼されているワーカーさんも。
なんとなく来て、なんとなく働いているワーカーさんも。
制度上は同じ上昇率です。
個人の頑張りが時給に反映されるというより、制度の改訂で全員一律に上がっていくという感じです。
「頑張っている人はもっと上げればいいじゃないか」というツッコミへ
そう思う方もいると思います。正論です。
実際、以前は「このワーカーさんは特別に頑張っているから、派遣先と交渉して時給を上げよう」という場面がありました。
でも最近は状況が変わってきています。
制度改訂による毎年の上昇幅が、個別交渉で上げられる幅を超えてきているケースが増えてきたんです。
例えば毎年4月に50円上がる仕組みがある中で、個別交渉で「頑張っているから30円上げましょう」という話をしても、制度の上昇分には届かない。
しかも派遣先企業も「毎年4月に自動的にコストが上がっている」という現実の中で、さらに上乗せの交渉に応じる体力がなくなってきているケースが増えています。
頑張りを評価したくても、制度の上昇率が個別交渉の余地を狭めてしまっているという、なんとも複雑な構造になってきています。
具体的にイメージするとこんな感じです
倉庫・物流系の現場でよくあるケースを例に挙げると…
派遣会社がワーカーさんの時給を30〜50円上げようとすると、派遣先企業には60〜100円程度のコスト増をお願いすることになります。
なぜかというと、時給が上がると社会保険料などの法定福利費も連動して増えるので、ワーカーさんへの還元分よりも派遣会社が派遣先に請求する金額の方が大きくなる仕組みだからです。
毎年4月に制度改訂で自動的にコストが上がっている中で、さらに個別交渉で60〜100円の追加コスト増をお願いするのは、派遣先企業にとってもかなりの負担です。
「頑張っているワーカーさんの時給を上げてあげたい」という気持ちはあっても、現実的に動かせる余地がどんどん狭くなってきているというのが正直なところです。
ワーカーさんへのメリットとデメリット
メリット
- 交渉しなくても毎年時給が上がる
- 物価上昇に対応した賃金水準になっていく
- 派遣会社によって差がつきにくい
デメリット
- 頑張りが時給に直結しにくい
- スキルアップのモチベーションが上がりにくいケースもある
- 「なぜこの時給なのか」がわかりにくい
営業としての複雑な気持ち
正直に言うと、以前は「このワーカーさんは頑張っているから時給を上げたい」と派遣先と交渉して、うまくいったときの達成感がありました。
でも今は制度が自動的に動いてくれるので、その場面が減ってきています。
悪いことではないんですよ、制度として整備されているのは。
ただ、個人の頑張りが正当に評価される仕組みというのは、まだまだ課題があるなと思っています。
時給が上がることと、頑張りが報われることは、必ずしも同じじゃないので。
上昇率についていけない会社も出てきている
時給が毎年上がるのはワーカーさんにとっていいことです。でも、その恩恵を受けられない立場の人たちもいます。
派遣会社の倒産が急増しているという現実
「派遣会社の倒産ニュースをよく見かけるな」と感じていませんか?
実際に数字があります。
帝国データバンクの調査によると、2025年1〜8月の労働者派遣業の倒産は59件で、前年同期比55.3%増という急増ぶりです。このペースが続けば通年で90件前後に達する可能性があり、過去最多を更新するとみられています。倒産の約7割が売上不振を原因としており、負債5,000万円未満の小・零細事業者が半数以上を占めています。
なぜ倒産が増えているのか
少子高齢化や物価上昇、政府主導の賃上げ政策により人件費が増加していますが、派遣会社からの単価交渉に応じる企業が少なく、特に中小規模の派遣会社では、このコスト増加分を派遣先企業に転嫁することが難しく、経営が圧迫されています。
派遣を使う企業側の話
倉庫・工場系の現場で派遣を使いたい企業にとっても、派遣賃金の上昇はコスト増に直結します。 荷主や取引先が「わかった、その分うちも払う」と価格転嫁に理解を示してくれる企業ならいいんです。
でも現実は、ブルーカラー系の現場を派遣で回している会社の全てがそんな体力があるわけじゃない。
「派遣を使いたいけど、コストが高くなりすぎて使えなくなった」という話も、現場では少しずつ聞こえてきています。
時給が上がることで得をする人がいる一方で、そのコストを支えきれなくなる人たちもいる。制度の整備が進む中で、この矛盾はこれからも続いていくと思っています。
派遣は「悪」ではない
ここまで読んで「派遣って問題だらけじゃないか」と思った方もいるかもしれません。
でも自分はそう思っていません。
派遣という仕組みは、社会にとって必要な雇用調整機能を担っています。
企業が正社員だけで現場を回そうとすると、繁忙期・閑散期の波に対応できません。物流の現場なら年末年始や引越しシーズン、食品工場なら盆暮れ前の増産期など、一時的に大量の人手が必要になる場面は必ずあります。
そういった一時的な労働力の需要と供給をつなぐのが派遣の本来の役割です。
自社雇用化だけが正解ではありません。派遣という働き方を選ぶワーカーさんにも、それぞれの事情や理由があります。育児の合間に働きたい、いろんな現場を経験したい、今は正社員にこだわらず稼ぎたい、そういった多様なニーズに応えられるのが派遣の強みでもあります。
時給が上がること、制度が整備されること、倒産が増えること、派遣を使えない企業が出てくること。
これらは全部、同じコインの表と裏です。
「働く人が守られる社会」と「企業が使いやすい派遣」のバランスをどう取るか。
簡単に答えの出ない問いだなと、現場にいながら毎日思っています。
まとめ
- 最近は毎年4月に派遣の時給が50円前後自動的に上がる
- 政府の時給1,500円目標の流れで基準額は右肩上がり
- 頑張っても頑張らなくても同じ上昇率というのが現実
- 賃金が上がるのはいいことだけど、個人の頑張りの評価は別の話
- 2025年1〜8月の派遣会社倒産は59件・前年比55%増と急増中
- コスト増についていけない中小派遣会社・派遣利用企業も増えている
- ただし派遣は社会に必要な雇用調整機能を担っている
- 「働く人が守られる社会」と「使いやすい派遣」のバランスが課題
※この記事は個人の見解をもとにした雑記です。倒産件数は帝国データバンク(2025年9月発表)のデータを参照しています。制度の詳細については厚生労働省の公開情報をご確認ください。
参考:帝国データバンク「労働者派遣業の倒産動向(2025年1-8月)」 https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250908-hakenntosan/



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